子どもたちに病気と闘う勇気と希望を届けたい 【創設者インタビュー 】
2026.03.12

記者:本日は、Hair for Childrenの創設者であり、現在医学科6年の伊谷野友里愛さんにお越しいただきました!
設立の背景やこれまでの歩みに迫っていきます。伊谷野さん、本日はよろしくお願いします!
伊谷野:よろしくお願いします!
Q1:なぜHair for Childrenを創設しようと思ったのですか?
伊谷野: 始まりは2017年4月、私がまだ中学3年生の頃です。
当時高校2年生だった伊谷野真莉愛が中心となって、群馬県で「女子高生ヘアドネーション同好会」を立ち上げたのですが、私はその設立メンバーの一人として参加しました。
その頃、祖父ががんで亡くなり、ちょうど同じ時期に、テレビで「がんの治療過程で頭髪が抜け、悩みを抱えている子どもたち」の姿を見たんです。
子どもたちは日々成長していくので、頭のサイズもどんどん変わります。そのため、高額な医療用ウィッグを何度も買い替えることは難しく、なかなか手に入らないという現状を知りました。
祖父と同じ病気で苦しんでいる子どもたちがいるという事実に直面し、「なんとかこの子たちの力になりたい」と強く思いました。
記者:当初の「女子高生ヘアドネーション同好会」というお名前には、どのような想いが込められていたのですか?
伊谷野: ヘアドネーションは、学生にとって「一番身近なボランティア」だと考えました。「誰かの役に立ちたい」と思っている学生はたくさんいると思うんですが、実際には勉強に追われていたり、お小遣いにも限りがあったりしますよね。自分の時間を削ってボランティア活動に行ったり、募金をしたりするのは、学生にとってなかなかハードルが高いと思うんです。
記者:確かに、学生にとっては時間やお金の面で難しいことも多いですよね。
伊谷野: そうなんです。でも、ヘアドネーションならお金もかからないし、特別な時間も使いません。「髪の毛を伸ばして寄付する」、ただそのプロセスだけで困っている子どもたちの助けになる。それって本当にすごいことだなと思いました。
だからこそ、このヘアドネーションという活動を全国の学生に知ってもらって、気軽に参加してもらえたら本当に嬉しいなと考えるようになったんです。
Q2:創設当時、一番大変だったことや苦労したことは何ですか?
伊谷野: やはり、「集まった髪の毛を、実際にウィッグにして子どもたちに届けるまでのルート」をゼロから開拓することです。
ヘアドネーションで髪を集めることができても、学生の熱意だけではウィッグを製作することはできません。 知識も人脈もない中で、どうすれば形になるのか本当に手探りでした。 まずは、どのようなプロセスでウィッグが作られるのか調べようと思い、髪の毛を寄付した団体に連絡をとってみました。
しかし、突然音信不通になってしまい、髪の毛が本当にヘアドネーションに使われているのかすらわからなくなってしまいます。もしかしたら髪の毛はどこかで売られているかもしれないという話をラジオ等で聞き悲しい思いで胸が一杯になりました。
そこで、ヘアドネーション同好会では髪の毛の使用用途がはっきりとわかるようにしようと決め、SNSで日々の活動についての発信を行いはじめ自分たちで協力してくれるウィッグ会社を探し始めました。 姉と一緒に全国30社以上の全国ウィッグ会社に片っ端から電話しはじめました。
実績もない中高生に協力してくれるウィッグ会社はなく、全ての会社に断られてしまいました。時には担当者に冷たくあしらわれることもあったんです。
そんな中唯一、アートネイチャーさんだけが話し合いに応じてくれました。一度は断られたもののその後も粘り強く交渉を進めました。 アートネイチャーさんにお返事をもらってからは、状況が気になって毎日電話をかけていました(笑)。
30社電話をかけてお返事をもらえたのがアートネイチャーさんだけだったので、これを逃したらきっとどの企業さんも協力してくれないと思い、とにかく必死でした。
最後には私たちに協力してくださることと、試作のウィッグを作ってくれることが決まって。その時はもう「やったー!」って姉と大喜びしました(笑)
Q3:Hair for Childrenを創設するにあたって、一番大切にした理念や想いは何ですか?
伊谷野: 一番大切にしているのは「幸運の輪を広げる」ということです。
私たちの活動は、髪を寄付してくださる方々をはじめ、全てが「誰かを想う心」による行動で成り立っています。 みんなの善意が込められているこのウィッグが、患者さんにとって病気と闘う勇気や希望を届けるものになってくれたらいいなと思っています。
実は、私たちが提供するウィッグには「幸運のウィッグ」という名前がついているんです。
ウィッグを受け取った子どもたちに、「より多くの幸運を引き寄せて欲しい」という願いから名付けられました。
このウィッグが、ただ髪の代わりになるだけでなく、子どもたちに幸運を運んできてくれるお守りのような存在になればと願っています。
Q4:創設時に「これだけは絶対に守ろう」と思ったことはありますか?
記者:中高生の姉妹で立ち上げた団体をここまで育ててこられたわけですが、創設時に「これだけは絶対に守ろう」と思ったことはありますか?
伊谷野: 「活動を応援してくれるみなさんに感謝の気持ちを忘れない」ということです。
活動を続けていく中で、壁にぶつかったり、困難に直面したりしたことは多々ありました。 でも、そんな時にいつも私たちを救ってくれたのが、全国から送られてくる髪の毛と、そこに同封されている温かいお手紙でした。
設立当初はまだ実績もなくて、中高生で社会的な力もありませんでした。それなのに、まるで臓器提供と同じように「体の一部」である大切な髪の毛を、私たちを信じて提供してくださる。それが本当に嬉しくて……。
この感謝の気持ちをどうしても直接伝えたくて、寄付してくださった方へのお礼のお手紙を書き始めました。
記者:お礼のお手紙には、そういった深い感謝の念が込められていたのですね。
伊谷野: はい。私たちの活動は決して自分たちだけで成り立っているわけではありません。
ウィッグ製作にご協力いただいているアートネイチャーさんをはじめ、患者さんやご家族、病院のスタッフの方々。そして、髪の毛を送ってくださる方々や、SNSで「いいね」や拡散をして応援してくれる方々など、本当に様々な方々のご協力のおかげで続けることができています。
記者:たくさんの方の想いが重なって、今の「Hair for Children」があるのですね。
伊谷野: その通りです。だからこそ、関わってくださるすべての方々への感謝の気持ちを決して忘れず、そして皆様から信頼していただける団体であり続けるために、SNS等で日々の活動をしっかりと報告することも大切にし続けています。
Q5:創設者として、団体を続ける上で最も大切にしていることは何ですか?
記者: 中学時代からスタートし、今年で10年目。現在は医学生としてお忙しい日々かと思いますが、創設者として団体を「続ける」上で最も大切にしていることは何でしょうか?
伊谷野: 一番は、「次世代へ想いを繋いでいくこと」と「一緒に活動するメンバーがやりがいを持てるチームづくり」です。
記者:立ち上げ当初のメンバーから、後輩の方々へとバトンを渡していくフェーズに入っているのですね。
伊谷野: はい。私自身、医学部での学びが進むにつれて学業も忙しくなりました。だからこそ、メンバーには心から感謝しています。一人ひとりが「病気の子どもたちのために」という根本の理念に共感し、主体的に楽しく活動できるような温かい環境を大切にしています。
記者:メンバー全員が同じ想いを共有していることが、長く続く秘訣なのですね。
伊谷野: そうですね。そしてもう一つは「決して支援を途絶えさせないという責任感」です。「幸運のウィッグ」を待ってくれている子どもたちがいる限り、私たちが築いてきたこの仕組みを止めるわけにはいきません。
記者:なるほど。先ほどお話しいただいた「感謝」のお話にも通じますね。
伊谷野: おっしゃる通りです。髪を寄付してくださる方々、ウィッグ製作にご協力いただいているアートネイチャーさんなどの企業の方々、そして共に活動してくれるメンバー。
そうした皆さんとの「信頼関係」をこれからも誠実に守り抜くこと。それが、創設者として団体を長く続けていく上で最も大切な使命だと思っています。
Q6:普段の仕事内容について、特に自分が主体となっている仕事を中心に教えてください。
伊谷野:主に、ウィッグの製作や在庫管理に関して、アートネイチャーさんとの連携業務を行っています。担当の方とメールでこまめにやり取りをし、サイズ不足の解消や、子どもたちにスムーズにウィッグを届けられるような調整を行うのがメインの仕事です。
Q7:その活動を通して自分が印象に残っている経験や、大きく成長できたと感じる点を教えて下さい。
記者:これまでの活動を通して、特にご自身の中で印象に残っている経験や、大きく成長できたと感じるエピソードを教えてください。
伊谷野: 活動を始めてから約1年が経った、2018年の3月のことです。色々な壁を乗り越えて私たちの想いがやっと実を結び、とうとう初めて「幸運のウィッグ」を患者さんに提供することができた日のことは、一生忘れません。
記者:1年越しの第1号だったのですね!どのような方にお渡しされたのでしょうか?
伊谷野: 小児がんを患っている、当時11歳の女の子でした。ウィッグを直接手渡すために病院を訪れたのですが、その子が私たちの目の前で、おそるおそるウィッグを被ってくれたんです。 ウィッグを着けた後、鏡をじーっと見つめて、「普通に女の子だ」という言葉を2回繰り返したんです。
記者:「普通に女の子だ」……胸が締め付けられるような、でも本当に嬉しい言葉ですね。
伊谷野: はい。その時の光景と言葉は、今でもはっきりと覚えています。その子が本当に喜んでくれて、傍にいたお母さんも病院の先生方も泣いて喜んでくださって……。ゼロから仕組みを作る中で途中で挫けそうになったこともありましたが、「この活動を続けてきて本当に良かった」と心の底から強く感じました。
記者:その経験が、現在のご自身にどのような影響を与えていると感じますか?
伊谷野: 自分たちの活動が、一人の女の子に確かな幸せを届けることができた。その喜びと感動は、私がこの先もHair for Childrenの活動を続けていくための、最も大きな原動力となりました。 そして何より、この時の経験が深く心に刻まれているからこそ、「将来は子どもたちの命と心に寄り添う医師になる」という、私自身の人生の明確な目標と覚悟に繋がっています。
Q8:チーム一丸となって取り組んだ経験や、活動を通して初めて関わった方たちとのエピソードを教えて下さい。
伊谷野: 一番大きな転機であり、チームの力を実感したのは、2023年の4月です。
実はこの時、「女子高生ヘアドネーション同好会」から現在の「Hair for Children」へと改名し、団体として再スタートを切りました。
記者:再スタートということは、一度活動を休止されていた時期があったのでしょうか?
伊谷野: はい。新型コロナウイルスの影響で、どうしても活動を休止せざるを得ない期間がありました。先が見えない中で、正直なところ「このまま団体を終了しようか……」と深く悩んでいたんです。
記者:そこからどのようにして、現在の「Hair for Children」としての活動再開に至ったのですか?
伊谷野: 私が横浜市立大学に進学したことが大きなきっかけでした。入学時からよく相談に乗ってくださっていた、アドミッションズセンター専門職・学務教授の出光直樹先生が「ぜひ活動を続けてほしい」と力強く後押ししてくださったんです。そのお言葉に勇気をいただき、拠点を神奈川県横浜市に移して再開しようと決意しました。
記者:大学の先生のサポートが背中を押してくれたのですね。再開に向けての道のりはいかがでしたか?
伊谷野: いざ動き始めたものの、全国から寄せられる「髪の毛の受け入れ窓口」を新しく探さなければならないという大きな壁にぶつかりました。そこで、医学部公衆衛生学教室教授の後藤温先生に思い切ってご協力をお願いしたところ、快く引き受けてくださり、無事に髪の毛の受付を再開することができたんです。
記者:自ら先生方に掛け合い、道を切り拓いていった行動力が実を結んだのですね!共に活動するメンバーはどうやって集めたのですか?
伊谷野: メンバーに関しても、当時の新入生たちに声をかけて、新しい仲間と一緒に本当に「一から」立ち上げ直しました。どうすれば以前のように活動を軌道に乗せられるか、新しいメンバーとチーム一丸となって試行錯誤し、なんとか団体を立て直すことができました。
記者:まさに「チーム一丸」となって困難を乗り越えたのですね。
伊谷野: はい。あの時一緒に頑張ってくれた当時の新入生たちも今では上級生になり、さらにその後輩たちもたくさん入ってきてくれました。今はみんなで力を合わせて、とても活気ある雰囲気で日々の活動を頑張っています!
Q9:Hair for Children の好きなところを教えて下さい。
記者:これまでのお話からも団体の温かさが伝わってきますが、改めてご自身が感じる「Hair for Children」の好きなところを教えてください。
伊谷野: 一番は、メンバー全員が「子どもたちのために」という温かい共通の想いを持っているところです。そこがブレないからこそ、すごく良いチームワークが生まれていると感じます。
記者:同じ目標に向かっているからこその団結力ですね。普段のミーティングや活動はどのような雰囲気なのですか?
伊谷野: 活動に対して真剣に考え、意見を出し合いながらも、決してお互いを否定せず尊重し合える関係性が築けています。いつも和やかに楽しく活動できる雰囲気がとても好きなんです。
記者:新しく入ってくる学生さんにとっても、すごく魅力的な環境ですね!
伊谷野: そう感じてもらえたら嬉しいです。私自身、Hair for Childrenが活動の場であると同時に、メンバーにとって「安心できるサードプレイス(居場所)」であってほしいと強く願っています。
記者:安心できる居場所、ですか。
伊谷野: はい。大学生活の中では、勉強が忙しかったり、悩んだりすることもあると思います。そんな時でも、「ここに来ればいつでも温かく受け入れてくれる」「仲間と笑い合える」。そんな風に、いつ来てもホッとできる場所であり続けてほしいなと思っています。
Q10:学業との両立は大変ですか?理由やコツとともに教えて下さい。
伊谷野: 正直なところ、メンバーのみんなが一番苦労しているのは「学業との両立」だと思います。特に医学部は、定期試験を1つでも落としてしまうと留年になってしまうという厳しさがあります。
記者:それはかなりのプレッシャーですね……!試験前などはどうされているのですか?
伊谷野: 試験前はもう本当に大変で、みんな真剣に図書館に籠って猛勉強しています(笑)。日々の活動を進めながら、学業も完璧に両立して動くというのは、なかなか難しいというのが本音です。
記者:そんな大変な時期を乗り越えるための「コツ」や、モチベーションを保つ秘訣はありますか?
伊谷野: やはり、同じように頑張っているメンバー同士で「お互いに励まし合うこと」ですね。試験のプレッシャーも、活動の忙しさも共有できる仲間がいることは本当に心強いです。
記者:先ほどおっしゃっていた「安心できる居場所」という言葉がここでも活きてくるのですね。
伊谷野: はい、まさにそうです。そしてもう一つ、私たちの大きな心の支えになっているのが、SNSで応援してくださる方々の温かい反応や、寄付していただく髪の毛と共に送られてくるお手紙の存在です。 勉強と活動の両立でいっぱいいっぱいになりそうな時でも、そういった温かい言葉に触れると本当に深く癒されて、「また頑張ろう!」というパワーをもらっています。
Q11:今後 Hair for Children でチャレンジしてみたいことがあれば教えて下さい。
記者:群馬での立ち上げから始まり、横市での再スタートを経て今年で10年目。これまで歩みを続けてこられましたが、今後 Hair for Children で新たにチャレンジしてみたいことがあれば教えてください。
伊谷野: はい。より多くの子どもたちに「幸運のウィッグ」を届けられるように、活動を「全国展開」していきたいという大きな目標があります。
記者:全国展開ですか!それはさらに多くの患者さんの希望になりますね。
伊谷野: ええ。私たちが提供しているウィッグには、髪を寄付してくださった方々の温かい善意がたくさん込められています。この「幸運のウィッグ」がもっと全国に広まることで、病気と闘う子どもたちに、少しでも前を向く勇気と笑顔を届けることができたらと思っています。
記者:その大きな目標を達成するためには、一緒に活動するメンバーの力もさらに必要になってきそうですね。
伊谷野: まさにその通りです。全国の子どもたちに支援を届けるためには、今のメンバーの力だけでは足りない部分も出てくると思います。だからこそ、私たちの想いに共感し、一緒に活動してくれる仲間がこれからさらに増えていってくれることを心から願っています。
Q12:今後、Hair for Childrenをどんな団体にしていきたいですか?
伊谷野:先輩から後輩へと想いがしっかりと受け継がれ、この先もずっと地域や社会から愛され、必要とされ続ける団体にしていきたいです。
記者:時代やメンバーが変わっても、根底にある温かい理念は変わらない、と。
伊谷野: その通りです。これまでも多くの方々に支えられてここまで来ることができました。だからこそ、これからも社会や応援してくださる方々から「あってよかった」と心から思ってもらえるような、温かくて確かな場所であり続けてほしいと願っています。
Q13:後輩や次の代表に、どんな団体を残したいですか?
記者:先ほど「先輩から後輩へ想いを受け継いでいきたい」というお話がありましたが、これから団体を引っ張っていく後輩や次の代表には、具体的にどのような団体を残したいですか?
伊谷野: メンバー自身が、日々の活動を通して多くの学びを得て成長でき、「この団体に入ってよかった」と心から誇りに思えるような団体を残したいですね。
記者:支援を待つ子どもたちのためだけでなく、活動するメンバーの人生にとってもプラスになる場所でありたいということですね。
伊谷野: はい。私自身がこの10年間、本当にたくさんの方々に支えられながら、大きな成長と将来の目標を見つけることができました。だからこそ、後輩たちにもここでの経験を自分自身の人生の糧にしてほしいと思っています。
記者:これまでの温かいエピソードを伺っていると、きっと後輩の皆さんにとってもかけがえのない経験になるだろうなと感じます。
伊谷野: そうなってもらえたら嬉しいです。そして何より、先ほどもお話ししたような「みんなで励まし合える、温かくて居心地の良い場所」として。プレッシャーの多い大学生活の中でも、いつ来てもホッとできるこの安心感を、次の世代にもずっと大切に守っていってほしいと願っています。
Q14:最後に、今 Hair for Children に入ろうか迷っている横市学生・新入生に一言お願いします。
伊谷野:Hair for Childrenでの活動は、大学生活を豊かにしてくれるだけでなく、一生の財産になるような仲間と経験がたくさん詰まっています。少しでも興味があれば、ぜひ一緒に活動しましょう!横市生のみなさんの参加を心からお待ちしています!
記者:本日はお忙しい中、ありがとうございました!
インタビュー協力:団体創設者 伊谷野友里愛(医学部医学科6年)
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